ものづくり・50 ml のふたつのボトル
真鍮と火
香水には香水の時計がある。肌の上で、香りは分ごとに、やがて時間ごとにひらいていく。パティナのボトルは、もっとゆっくりした時計をもうひとつ持っている。月と年で刻む時計だ。陶器のボトルは時を数えない。ひと窯の火の跡を、そのままとどめている。
R Parfums は、サイゴンの独立系の香水メゾン。ひとつの香りに、50 ml のボトルをふたつ、同じ格で用意している。パティナのボトルには三枚の真鍮。ベトナムで一枚ずつ、手で腐食させ、やすりをかけて磨き上げる。陶器のボトルのキャップは、型で成形した丸い球。ひとつずつ手で削り整えてから窯で焼き、釉は Chu Đậu(チューダウ)焼を思わせる。中の香りは、どちらも同じだ。
第一部・パティナ・真鍮と歳月
パティナ
三枚の真鍮を手で腐食させ、磨き、50 ml のガラスのボトルにぴたりと留める。どのプレートも一点もので、持ち主はただひとり。


古都フエに着想を得て
着想から、小さな装身具へ
古都フエを訪れたとき、古い品々の前で長いあいだ足を止めた。苔むした跡、まだらに擦れた金属の筋。古いものが大切にされるのは、そこに預けられた歳月ゆえだ。
パティナのボトルのための12か月の研究開発が、その時の跡を香水瓶にのせ、小さな装身具に変えた。
真鍮プレートができるまで
真鍮の表面を温め、酸化物と金属塩を薄く一層ずつ重ねる。刷毛で塗り、吹きつけ、あるいはスポンジで含ませて。それから一枚ずつやすりをかけて磨き、ボトルに留めて、紫外線を防ぐコーティングを施す。
真鍮プレートの時計
三枚、三つの時
パティナは、金属を傷める腐食と見間違えられやすい。実際には自然にできる被膜で、この「腐食」こそが、真鍮を本当の腐食から守っている。
- I・素の真鍮
- ボトルを受け取った日の、真鍮の色を保つ。
- II・変わりゆく
- 生きている一枚。紫外線を防ぐコーティングの下で、持ち主の机の上でも色を変えつづける。
- III・パティナに覆われて
- ボトルに留める前に、職人がこの一枚を最後の段階まで進めておく。
ボトルを受け取った日
プレート I は真鍮の色のまま。III はすっかりパティナに覆われ、II はその途中にある。
半年、机の上で
部屋の光と湿度と温度が、II にゆっくりと書き込んでいく。その一枚だけの速さで。
太陽をひとめぐり
同じ日に買ったふたつのボトルも、別々の家に置かれれば、それぞれの道をたどる。
三年、手もとで
真鍮プレートには、ほかの誰でもない、その部屋だけの跡が刻まれていく。
十年、小さな思い出の品に
パティナは真鍮を傷めない。むしろ守っている。香水が尽きて久しくても、プレートは残る。
ふたつの手仕事
香りをつくる人、真鍮を仕上げる人たち
香りをつくるのは Rei Nguyen。真鍮プレートはベトナムの職人たちの仕事だ。最初の溶液を塗るときから、三枚がボトルの上に落ち着くまで。
「R Parfums の香水瓶ひとつひとつにのるパティナは、どれも一点ものの作品です。持ち主は、ただひとりです。」
金継ぎ:三つのかけら、ひとつの姿
金継ぎが割れた陶器を金でつなぐように、中の香水の金色が、ばらばらに見える三枚の真鍮をひとつにつなぐ。

Series #1・フィルム
『パティナのボトル』
パティナのボトル
シリーズ #1『パティナのボトル』。R Parfums のものづくりのフィルム、その第一作。真鍮のプレートを、はじまりの日から今日まで追う。

第二部・陶器・土、釉、火
陶器
陶器のボトルのキャップは、土でできた小さな球体。型で成形し、手で削り整え、乾かし、釉をかけて窯で焼く。釉は Chu Đậu 焼を思わせ、その色は光によって、また窯ごとに変わる。


鋳込み
クリーム色の泥漿を、水差しから型の列へ注ぐ。

施釉
桃色の生の釉を、刷毛で一列ずつ球体にかける。

窯出し
釉が色づいた。青灰、茶、艶のある黒、まだらの青。

釉とタッセル
釉の色は、キャップごとに
釉の表情は窯が、タッセルは人の手が決めます。陶器のボトルはどれも、できあがったままの姿でお届けします。
釉の色は光によって、また窯ごとに変わるため、色番号は設けていません。陶器のボトルには、それぞれ R を刻んだ陶器のチャームが付きます。
ふたつの手仕事
香りをつくる人、陶器をつくる人たち
香りをつくるのは Rei Nguyen。陶器のキャップはベトナムの陶房の仕事で、ひと窯ずつ焼き上げる。どのキャップも、土を練るときから窯出しまで、人の手を通る。
タッセルとチャーム
R を刻んだ丸い陶器のチャームに、人の手で仕上げたタッセル。最後の工程は箱詰め。ボトル、キャップ、タッセル、チャームを、それぞれのくぼみに手で収める。


フィルム・陶房の記録映像
『陶器と火』
陶器と火
R Parfums の陶器のキャップをつくる陶房で撮影した記録から編んだフィルム。音声はなく、クリックしたときにだけ再生されます。
フィルムについて
フィルムは、ひと窯分の陶器のキャップをはじめから終わりまで追う。陶房、土練り、型、型への泥漿の鋳込み、球体ひとつずつの削りと拭き上げ、乾燥、桃色の生の釉の施釉、窯入れ、火を経て本来の釉の色になった球体、ボトルとキャップとタッセルの箱詰め、仕上がったキャップ。
概要
ふたつのボトル、要点
- ふたつのボトル
- パティナと陶器。容量はともに 50 ml、中の香りも同じです。六つの香りすべてを、どちらのボトルでもお選びいただけます。
- パティナ
- 手で腐食させ、やすりをかけて磨き、ボトルに留めた三枚の真鍮。紫外線を防ぐコーティングで仕上げる。 真鍮プレートができるまで
- 陶器
- 型で成形し、手で削り、窯で焼いた陶器のキャップ。釉は Chu Đậu 焼を思わせる。釉は窯が、タッセルは人の手が。R を刻んだ陶器のチャーム付き。 陶器のキャップができるまで
- 調香
- Rei Nguyen
- フィルム
- Series #1『パティナのボトル』(YouTube)・『陶器と火』(1分29秒、音声なし)
- 実物を見る
- ホーチミン市内の三つの店舗。毎日営業しています。
- 配送
- ベトナム国内への配送です。お支払いは VietQR による銀行振込(VND)またはクレジットカード(USD)。
よくあるご質問
パティナのボトルと陶器のボトルは、どう違いますか?
中身は同じ香りで、容量も同じ 50 ml です。いずれも税込(VAT 8%)です。
パティナのボトルの真鍮プレートは、色が変わりますか?
はい。ごくゆっくりと、お手元に届いたあとも変わりつづけます。
パティナは真鍮を傷めませんか?
いいえ。パティナは、真鍮の表面が酸化するときにできる被膜です。この被膜が下の金属を覆い、本当の腐食からプレートを守ります。
陶器のキャップは、どのようにつくられますか?
泥漿を型に流し込み、球体として取り出したら、手で削り整えて口をあけ、乾かし、釉をかけて窯で焼きます。釉は Chu Đậu 焼を思わせ、その色は光によって、また窯ごとに変わります。
ボトルの釉とタッセルは、どのように決まりますか?
釉は窯が、タッセルは人の手が決めるため、同じ陶器のボトルは二つとありません。パティナのボトルも同じで、どのボトルにもそれぞれのプレートがあり、一点ものです。お選びいただくのは、香りだけです。
六つの香りは、どこで実際に試せますか?
六つの香りすべてを肌でお試しいただけるのは、ホーチミン市内の三つの店舗。毎日営業しています。
パティナに覆われた真鍮の色、火をくぐった陶器の色。時が指紋を残す、ふたつのかたち。