ものづくり · 2025
インドシナの面影、建築と文化に見る香りの着想
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2025年4月24日に掲載されたベトナム語の原文からの翻訳です。

インドシナの面影、文化遺産に香りの着想を得て
記憶は、漆喰の壁や煉瓦、瓦、色あせた木の窓枠のなかだけに宿るのではない。ときにそれは、ひとつの香りのなかで、静かによみがえる。その香りが呼びさますのは、かつてそこにあった空間、過ぎ去った時間、そして一度も色あせることのなかった精神、インドシナである。
細部に時がとどまる、インドシナの遺産
「インドシナ」と聞くと、歴史が交わったひとつの時代を思い浮かべる人が多い。ベトナムと西洋が出会い、ベトナムの精神が建築の線の一本一本にまで染みこんでいた時代だ。ハノイ大劇場、独立宮殿(Dinh Độc Lập)、ホイアンの古い町並み。こうした建物は、かつての繁栄の証しであるだけではない。土地の素材と西洋の構成、そしてベトナムの魂が混じりあった、文化の象徴でもある。その空間には、目に見えない記憶の層のように、いつも香りがあった。苔むした石造りの家の湿り気にとけこむ、古いオーク材の匂い。古い図書館に漂う、素焼きの土と古紙の匂い。高い階のバルコニーで干したばかりの絹が、インドシナならではの金色の陽ざしを照り返す、その匂い。そして、静まりかえった窓枠のすきまから忍びこむ、プルメリアやジャスミンの香り。それは時間の匂いであり、かつて人が暮らした空間の匂いだ。自らが根ざす土地のアイデンティティを守り継ぎたいと願う香りのつくり手にとっては、尽きることのない着想の源でもある。
香りが、文化を語る言葉になるとき
R Parfums にとって、ひとつひとつの香りが、言葉を介さずに物語る言語となる。時間と空間、記憶とアイデンティティの断片がとけあい、香りの層ごとにとどまっていく。香りの構成を古い家づくりにたとえるなら、層のひとつひとつは、時間の断面なのかもしれない。最初の層、トップノートは光だ。多くはリコリス、ホワイトペッパー、若いパチュリ、ターメリックのノートではじまり、サイゴンの朝の陽ざしが石の壁や薄い絹のカーテンに描く光のように、明るく澄んでいる。なかほどの層、ミドルノートは素材だ。プルメリア、茶葉、レザー、タバコ、手仕事の木の香りが重なりあい、細かな埃をかぶった古い部屋を思わせる。インドシナの柄を刷った絹や紙が、いまも跡をとどめている部屋である。最後の層、ベースノートは土台だ。黒檀、湿った土、ベトナムの沈香(じんこう)、安息香(ベンゾイン)の樹脂。物静かで揺るがないその香りは、遺産が守られ、時の歩みにあわせて芽吹いていくインドシナの大地に似ている。


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